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しかし、俺の友人――
親友は、『進むって言ったら進む、後悔はしないよりしたほうがマシだ』っと堂々と誇らしげに語るってくらいに自分の夢に誇りを持っている。
音楽馬鹿――と言える程に音楽が大好きで、中学の時から二人で練習してきた仲だ。
そいつもこの高校に入学、しかも一年生の成績優秀者の中の代表。
中の、というのはここの成績優秀者は一人だけではないらしいのだ。(噂によれば)複数いるらしい。
恐ろしい人達だ。
その恐ろしい人達の代表になっている親友も親友だが。
彼はちらっとこっちに目を移してから壇上へと上がっていく。
地毛の綺麗な茶髪からはつり目でもなければ垂れ目でもない黒い目が少し見える。
緊張しているのか、ずっと下を向いたままマイクの所に歩み寄った。
まだ着慣れていない制服で動き辛そうにマイクに手を伸ばし長さを整える。
そこでやっと生徒達が彼の顔を確認することが出来た。
はっきり申し上げるならば、少し童顔な感じの少年。だが、その見た目からは裏腹に何処か気品が漂う存在感が彼にはある。
『新入生代表の言葉』
先生がそう言ったあと、彼は、言われたままの事を話し、順調に入学式が続く。が、
「僕の個人的な目標なんですけど……」
「(……ん?)」
なんか嫌な予感がしてならない。というより、彼ならとんでもない事を言ってくる、事がわかってしまう。
そして案の定。
「卒業までにプロのミュージシャンになります!」
俺は拍子が抜けて椅子からずり落ちた。
――前言撤回。
彼、照川佳はただの馬鹿だ。
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