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――Ⅰ
「お前はなんで空気を読まないのだ」
翔は怒り、呆れ気味に佳に言った。
佳は若干なんで?見たいな表情をして翔を見る。まるで、自分が何か悪いことをしたのかいいたげな顔をして、
「読んだけど、空気」
まったく自覚症状なしな顔でそう言いかます。
だがしかし、あの発言のおかげで体育館は一瞬にして凍りつき、皆唖然としたままぐだぐだな入学式を終えてしまったのだ。
翔も正直ここまで自覚症状ないと怒る気すらなくしてしまう。
大きいため息を吐くと、黙ったまま校舎へと戻って行った。が、ここで佳に止められる。
少し怪訝そうに、
「…何だよ?」
「翔、三組だろ?、だったら教室はあっち」
「おっと」
全く反対の道に行っていたらしい。
何せこの高校は中まで広いので慣れるまで時間がかかるだろう。
だが、自分の教室すら覚えてない自分って、
――佳の方がよっぽど賢いか。
天才と天然は離したくても離れない悲しいものだから仕方ない――。
真面目な所は真面目、だが自分の事になると周りが見えなくなる。彼は、そんな『天才』と言われる者達の一人だと翔は思っている。
思っているだけだ。
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