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『陽一、お待たせ』
「おぅ、もういいんか?」
奈々でなければ、の話。
「……奈々」
『え、瑛司』
「今朝倉にたまたま会うてな」
かつて愛し、今も愛している女が目の前にいるのに他の男のものになったなんて我慢出来ない。
しかも、相手が杉崎なんて。
いや、きっと相手が誰であろうと俺は不機嫌になっただろう。
「杉崎、どういうことだ!!」
「どうもこうもないで?さっき言うたやん?」
「っ、」
きつく奈々を睨んだ。
俺は別れることにまだ納得していなかった。
まだ彼女を心から愛していたから。
別れた次に付き合う男がもう決まっていることにも納得していない。
奈々はそんな軽い女ではないと思っていたからだ。
「あ、ちょお!」
奈々の腕を掴んで無心で走った。
後ろから彼女がなにかを言ってきたのにそのことにも気にせず、ただ走った。
杉崎から奪い、やっと足を止めることが出来たのはとある公園だった。
『なんでこんなことするの!』
「俺はまだ納得してねぇ!なのに勝手に話終わらせやがって!」
一粒、また一粒と雨が空から降ってきた。
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