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奈々を失ったのは12月。
冷たい雨だった。
それが俺を見る奈々の頬骨辺りに当たった。
その雨がそのまま頬をつたって流れていった。
まるで泣いているように見えた。
『話すことなんてこれ以上ない』
そのまま冷たく言い放ってそっぽ向いた奈々を見ても、その心が俺の元にないなんて信じられなかった。
別れてしまうまではあんなに愛し合っていたんだから。
「なんでだよ」
『言ったじゃない。好きじゃなくなったって』
「そんなんで納得出来るかよ!」
『いい加減にして!しつこい』
そう言われ、カッとなった。
こんなにも人を真剣に愛せていたこと喜ぶなんて余裕はない。
俺は奈々を公園のフェンスに押し付けた。
すると金網同士がぶつかり合い、大きな音が響いた。
丁度、雨が本格的に降って来ていたから近所の住民が驚いて窓から顔を出すことはなかった。
晴れていたらわからなかったが。
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