序章

2/4
前へ
/527ページ
次へ
とある王国。この世界にすればどちらかといえば西洋風の大きな城が、小高い丘の上にそびえている。 -我が城がこうも簡単に破られるとは… その城からボロを纏い、ヨロヨロとよろめきながら走る一人の人影があった。 「貴様、止まれ。城から出てくる奴は皆捕縛するように言われている」 全身黒ずくめの巨大な影が立っており、低く響く声で口を開いた。勿論顔もフードに覆われていて、その口を見る事は出来ないのだが。 「く…どうやらただ者ではないようだな」 男は腰から細い剣を抜く。所謂レイピアと呼ばれる、突きに特化した細身の剣である。 「何だ、その針金のような金属は。まあいい、やる気ならば相手になるぞ…」 黒ずくめの影は、背中に紐でかけられた汚く不格好な布きれから、不自然に曲がりくねった金属の塊を取り出した。よく見ると、一枚の金属から出来ていながら、柄と刃のような部分の差別化が見て取れる。
/527ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加