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「こうなれば攻めあるのみ…」
男は果敢にも、この不気味な影に向かって剣を小刻みに揺らして錯乱させつつ、一気にその剣先を突き出した。
「小賢しい!!」
荒削りな鉄の塊が、磨き抜かれたレイピアを簡単に粉砕してしまった。男の手には、柄だけが握られている。
「!?」
「そんな柔刀、俺から言わせればなまくらよ。この錆刀の方がよっぽど使えるってもんだ。何なら、貴様の頭蓋を叩き崩して実証してやろうか?」
影は男を素早い蹴りで地面に倒れ込ませ、自らの刃を高々と掲げた後に一気に振り下ろした。
-私の部下達が、命を懸けてまで生かしてくれたこの命。申し訳ないが、このただただ虚しい場所にて尽きて逝くのか…
男は、もはやその剣を防ぐ方法もタイミングも残されてはいなかった。
「やるならやれ」
そう虚勢と分かりながらも声を張り、口を真一文字にギュッと力を込めて閉じながら、目をフッと閉じた。
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