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影は、掲げた刃を一気に男の頭上に振り下ろした。
カン!!
しかし、響いたのは男が一太刀を受けた痛みによる呻き声でも、脳漿と共に鮮血が噴き出すような音ではない。響いたのは、乾いた金属音である。
「誰だ、邪魔立てする愚か者は?」
「生憎だな。拙者からすれば、丸腰となった相手に刃を叩きつけるような貴様が愚か者だ」
「グハッ……」
更に、ドスッと痛々しい音が聞こえてくると共に、影が低い呻き声をあげながらスライドするように吹き飛ばされる。そしてそのまま近くの大木にめり込む事で、ようやく停止した。
「やってくれるな。だが、俺の渾身の一撃は防げまい…」
影は、逆にスライドして相手との距離を一気に詰める。その視線の先に移るは、若い男性のようである。
-素早い相手のようだが、力でねじ伏せる!!
影はそのまま飛び上がりながら、割って入った人物に向かって降下して来た。
「御免…」
影は、落下する事なく上空で一刀のもとに斬り伏せられた。そして、自らの体を灰に変えて消滅してしまったのだった。
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