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「……これは素晴らしい統率性でございますね。」
切り替わった画面を見つめるジョルジュが思わずといった感じで感嘆を洩らした。
国軍はまるで太鼓や笛のリズムに乗るように激しくもキビキビした動きで、左右から解放機構の軍団を遠巻きに迂回したかと思うと、それぞれに左右の斜め後方から一糸乱れず突撃を開始したのだ。
集団となれば人数が多ければ多いほど、自分1人くらいなら大丈夫と手を抜いたり勝手な行動に走ったりして何処かに綻びが生ずるものであるが、俯瞰して見る限りそんな部分は全く見当たらず、誰もが忠実に命令に従って動いていることにジョルジュは目を見張った。
解放機構側は、そんな国軍の素早い展開に着いていけてないのは画面から見て明らかであった。
解放機構もクリフォードに道を開けるために左右翼軍に中央軍が合流した形となっているが、これは国軍とは全く事情が異なる。
何故なら、合流してきた解放機構の中央軍は既に打撃を受けて兵力も士気も下がりまくりの状態であり、左右翼軍からしてみたら動揺と混乱に拍車を掛けるものでしかなかったからだ。
しかも左右翼軍を率いているティファとドミンゴも、クリフォードと同様で大軍を率いているという自覚が薄く、将としてそれに対処しようとする行動に入らず、ただ目の前の自分の戦闘に意識を向けるだけ。
故に、国軍の展開に効果的な集団行動など執れるはずもなく、左右斜め後方から銛のごとく突撃してきた国軍に解放機構の軍団はズタズタに寸断されることとなった。
しかし国軍の動きはこれで終わらない。
その兆候に一番最初に気付いたのはアリシアであった。
「あ、あれは何だ?
武器を手に馬に乗るなど聞いたこともないぞ!
ヤツらはアレで戦うつもりなのか?!」
ルイを映している右の画面に、ルイの後ろから横一例に槍を携帯して馬に跨がる隊が現れ、ゆっくりとルイの前に進み出たのだ。
「あぁ、騎馬隊ね。
コレってそんなに珍しいモンなの?」
それを見た幹弥はさも当たり前といった口調でアリシアに応えたが、どうやら騎馬隊はユアランドの常識には存在しないようで、アリシアのみならずジョルジュやワコルにまで驚きの顔を向けられてしまった。
幹弥はその雰囲気に気圧され、事情の説明を求めるようにフィラに弱々しい視線を送る。
「ユアランドにはあのような馬の使い方は無かった。
何故なら、魔法を使うにあたって馬上では集中しきれんからの。」
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