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それにこの世界に来たことで様々な疑問が沸いてきているのも事実で、それらを払拭できるなら早々に解消したい気持ちもある。
今自分の首に巻かれているこの赤い布のこと。
そして刺繍されていたあの紋様を何故自分が読めたのか。
そもそも“アレックス”って名前は何なんだ。
それに両親のことも気にならないと言えば嘘になる。
あとフィラが昨日言っていた“魔法”や、あの電球もどきの仕組みに対する好奇心もあったりする。
もし魔法というものが確実に存在するならば、自分も使ってみたい。
幹弥がそう思った時点で既に自殺の選択肢は除外されているようなものであった。
あとは生まれ変わる決意をどこまで揺るぎないものに出来るかという点に尽きる。
生半可な覚悟ではすぐに困難を避けてしまうだろう。
それでは意味がないのだ。
過去の自分を抹消するほどの覚悟が無ければ、生まれ変わることなんて出来やしない。
そう思った幹弥は、自分に厳しい視線を投げてくるフィラとワコルを睨み返す勢いで姿勢を正し、
「俺、きっと生まれ変わってみせます!
フィラさん、ワコルさん、どうぞよろしくお願いします!」
そう言い切ると同時に、テーブルに額を擦りつけるように頭を下げたのだった。
幹弥は頭の下げているので目で確かめられないが、二人の纏う空気が柔和になったことだけは感じられた。
その直後ワコルからは「よく言った」だの「俺のことは呼び捨てで構わねぇ」とかの声が聞こえてくる。
何だか自分が受け入れられたような気がして、幹弥はくすぐったい気持ちを覚えた。
考えてみればここまで自分のことに真剣に向き合ってくれた人など幹弥には居なかったのだ。
それだけでもとても心が温められた気がした。
しかしそれに甘えている場合ではない。
生まれ変わる決意をしたのだから、それを揺るぎないものにするためにも退路は断つべきであり、過去を振り返らないよう決めた誓いを宣言すべく再び姿勢を正した。
「俺は昨日までの自分にサヨナラするため、二度と前の世界の言葉を使いません!」
その直後、フィラのステッキが幹弥の頭を直撃し、ワコルは思い切り首を傾げたのだった。
幹弥は未だ気づいてなかったらしい。
自分が今発している言葉が既にユアランドの言語になっていることに……。
何故叩かれたのが分からずに悶絶する幹弥を見て、フィラは大きくため息を落とした。
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