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ザァァ……
雨だ。雨が降っている。
辺り一面に広がる緑。暗くてよく見えないが、どうやらここは山のようだ。少し開けた崖のようなところに、私は座りこんでいた。
…胸が痛い。
何のせいかはわからない。もしかしたらわかりたくないのかもしれない、と、何とは無しに思った。
ふと、目の前に人が倒れていることに気付いた。よく見ると、腹から赤黒い血のようなものがでている。
どうして今まで気付かなかったんだろう、と不思議に思うが、それどころじゃない。
…助けないと。
何故か足がうまく動かなかったので、はいずるようにして、その人の元まで辿り着いた。
……っ!
そこに倒れていた人の顔を見た時、どこか懐かしいような感じがした。
私は、この人を知っている。そう断言できる何かが、確かにあった。
でも、その人のことを思い出そうとすると、頭に鋭い痛みが走る。
頭の中に霧がかかったような、もどかしい感覚。
………あれ?
体中の力が抜けて、そこから動けなくなる。
途端に、視界がぼやけていく。
意識が少しずつ無くなっていき、激しい痛みと吐き気が全身を襲う。
そして、世界が壊れていく…。
はっ、と目が覚めた。
動悸が激しい。呼吸を調えるために、深く深呼吸をする。全身が汗でぐっしょりと濡れていて、気持ち悪かった。
…また、あの夢か…。
こうやって目が覚めるのも、これでもう何度目だろうか。
何度、この辛く悲しい夢を繰り返せばいいのだろうか。
誰も答えてはくれない。当たり前といえば当たり前だけど。
…もう答えはわかっているのに。
繰り返すのだ。
何度も、何度でも、繰り返す。
また、同じ朝が始まる。
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