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口いっぱいに何かを詰め込み幸せそうにする彼女は、まるでリスかなにかのよう。
せっかくの浴衣姿が台無しだ。
一樹は呆れながら春香に持たされた金魚の泳ぐ袋を覗き見る。
赤と黒の金魚達は狭い中で一生懸命泳いでいる。
「この出目金、一樹に似ている」
新がふざけて一匹の出目金を指差して言った。
魚類顔ということだろうか。
「……こいつら返してこようか」
「春香が怒ると怖いぞ」
そう、これは春香の金魚達。
勝手に返すとどうなるのか。
試してみたくはなるが、怖いのならやめておこう。
「もう夏休み終わっちゃうね。花火とかやればよかったよ」
いつの間にか食べ終わった春香が、寂しそうに呟いた。
「海に行っただろう」
「二人でね」
「何が不満なんだ」
「だってねぇ……」
春香は一樹を見て「三人の方がいいじゃん」と言った。
それに納得したように頷いた新。
一樹はというと、緩む口元を見られないように俯いていた。
そんな三人の夏祭り。
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