1, 出会い

2/4
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
いつもと変わらない病院 いつもと同じ 何の変化もない そんな゛1日"になるはずだった 「いい加減リハビリを真面目にしないと、いつまでも入院したままよ!?それでもいいんですか?確かに、もう一度立って歩くことは無理かもしれないけど…ある程度の生活は出来るようにならないと、病院側だって退院させられないんだから…」 そう言っているのは、僕の主治医。 いくら先生が何と言おうと、先生の話は僕の左耳から抜けていくだけだ。 なぜなら、僕は日本語が分からないから。 先生がうんざりしていることは表情から読み取れても、先生の話を正確に理解することはできない。 僕には日本語を学ぼうという意欲はさらさらなく、 ただただぼんやりと雲が一つもない青空を見ていた。 先生はそんな僕にあきれたか、看護師を呼び、僕の車椅子を引かせて部屋から出した。 この看護師は僕が日本語が分からないのを知っているのか、一つも話しかけてこない。 妙な緊張が感じられた。 エレベーターの前に車椅子を止め、 「ここからは一人で行けますよね?」と中国語で話してきた。 ぎこちない中国語ではあったが、何とか聞き取ることができた。 僕は何も言わずに開のボタンを押した。 エレベーターは、どこにも止まらずに真っ直ぐに五階にきた。 そして、無言でエレベーターに乗りこんだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!