杜撰な彼女の身だしなみ

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 とは言え、このまま手をこまねいている訳にはいかなかった。既に朝食の準備を終わらせたつかさは、ただ一人顔を見せないレオナ=ラージスを起こしに来たのだから。 「…レオナ。もう朝御飯の時間よ、起きて?」  足を踏み入れることが出来ずに、仕方なく部屋の出入り口から声を掛けるつかさ。これに対してレオナは、気持ちよさそうに寝返りを打つに留まった。  たまたま向きが変わり、その幸せそうな寝顔を目の当たりにしたつかさの目が、若干細まる。 「……レオナ? ご飯が冷めてしまうから、早く起きて頂戴?」  声のトーンが若干落ちていた。明らかに機嫌がよろしくないことが見て取れる。  そんな言葉が聞こえたのか、レオナはやはり起きた様子も無いままに言葉を返した。 「うーん…あと、5年待って~……」  或いは隊長であるところの神条正人(しんじょう まさと)であれば、それでも根気よく言葉を掛け続けただろう。  しかし実家で母親役をこなしていたつかさに、彼ほどの根気は無かったようである。
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