Episode 0 リスタート

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カツカツカツとヒールがレンガを走る音が裏道に響く。 「きゃっ」 女性はレンガの段差につまづき、こけてしまった。 立とうとするが迫りくる恐怖からか上手く立てないようだ。 恐る恐る顔だけ後ろを振り向くと、そこには丸みを帯びた中年の男性が目を光らせて立っていた。 月明かりに照らされたその姿に加え荒い鼻息に、不気味な微笑みはホラー映画に出てきそうな人物だ。 「へへへ……」 「いや、来ないで! ……お願いだから……!」 女性の顔が引き攣る。 すでに目からは涙が流れていた。 「なんでだい? ……こうしてせっかくおしゃべりできるんだ……。もっと仲良くなろうよ……」 「いや! アナタなんか知らないわ……」 「ボクは君をよーく知ってるんだよ? だからボクのことも知ってほしいなぁ……」 すでに普通の精神じゃない男性はゆっくりと女性に近づく。 男性が一歩足を進めるたびに女性は許しをこい、後ずさりをする。 が、すでに女性と男性の距離は手を伸ばせば届くほどだった。 背筋が凍る程不気味な笑みを浮かべ、男性は女性の髪を触った。 「サラサラだねぇ……綺麗な髪だ……。ほら、どうしたの? もっとおしゃべりしようよ」 すでに女性は言葉を失っていた。 ただただ怯え、肩を震わせていた。 「……けて」 「んー? なんだい?」 「誰か助けてぇぇぇ!!」
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