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「ね、ねね猫が……。 生き埋めに……」
その酷さは目を背けてしまうほどだった。
完全に死んでいると思っていた矢先、猫の胴体が動いた。
「ひっ!」
胴だけが動く姿は心臓に優しくはない。
しかし、見るとどうやら穴から頭を引っこ抜こうとしているようだ。
何度か試みたが諦めたのかまた重力に逆らわずぷらーんとぶら下がった状態になる。
「あ、すいません。ちょっと手伝ってもらっていいですか?」
ついに胴体が女性に喋りかける。
女性はおどろおどろしながらも立ち上がり、猫の胴を掴むと精一杯引っ張った。
が、後少しのところで抜けない。
「おい、そこのオッサン。サボってないで手伝え!」
壁越しで見えていないはずなのだが猫はビシッと男を指さし、命令した。
その気迫に男も言われた通りに猫の足を引っ張った。
「ぬぬぬぬぬ! うおっ!」
「ぐはっ!」
「きゃっ」
引っこ抜けた拍子に女性は小さく尻餅をつく。
男のほうは抜けた猫のダイビングヘッドが炸裂し、倒れてしまった。
なんとか抜け出せた猫は生還できた喜びを噛み締めながら首と頭をさすっていた。
「くっそー。ミーナのやろう後で覚えてろよ……」
その時猫の後ろから先程のピンクのロングヘアー少女が駆け足でやってきた。
「あ、あの! お怪我はありませんか?」
地面に座りこんでいる女性を覗き込み心配している。
「え、オレへの謝罪は無しですか!?」
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