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記憶の映像とは違う、本物の狂也の精神体が目の前に立っていた。
先程まで見ていた過去の光景は砂のように飛散して消えていく。
狂也はそれを忌々しげに一瞥して、再び俺に金色の目を向けた。
「そうやってシャドーを吸収した連中の過去を面白おかしく見てきたのかァ? …… さぞ俺が無様に足掻く姿は滑稽に映ったろうよ」
「違う!! 俺だって好きで見ているんじゃない!! それにこんな過去……面白がって見れるはずないだろ!!」
詩音の時だってそうだった。
シャドー吸収能力で見せられる記憶は暗い過去ばかりだ。
当事者寄りの視点に立って見る過去は、心が苦しくなるだけで決して気分のいいものじゃない。
それが例え敵である狂也の記憶だとしても、だ。
「俺はシャドーに取り込まれて暴走しているお前を止めに来たんだ! このままじゃお互いに命が危険にさらされる! だから―――」
マッドゥニスを俺に明け渡してくれ!
そう続くはずだった言葉は、
「お前……今まで何を見てきたんだ?」
その一言で断ち切られた。
気付いたら、狂也の背後には禍々しい影が佇んでいた。
影が彼の身体に纏わり付けば、狂也が苦しげに顔をしかめる。
けれどそれを振り払おうとはしない。
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