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灼熱のマグマに溶かされていくような熱さと激痛の中、欠片ほどに残る祥悟の意識は何とか惑利の声を拾っていた。
痛みを忘れたいと声を上げ、床をひっかき、それでもその眼は惑利を睨み付ける。
「ここまで言えば予想できるでしょうが……あなたの中にいるヴォイドを他の感情を持つシャドーに転移させました。それがこの実験―――」
ニタリと黒い黒い笑みを浮かべて惑利は天を仰いだ。
両腕を広げて、底から込み上げる歓喜と探究心に身体を打ち震わせて、
「そして今、この場に新たなシャドーが誕生する!!…… あァ、次はどんなシャドーが私に可能性を見せてくれるのでしょう!? ククッ、想像するだけでゾクゾクするじゃないですか!!」
シャドーに魅せられた男が嬉々として上げる耳障りな声が祥悟の耳を打った。
嫌悪に腹を立てたくても、耳を塞ぎたくても、沸々と湧き上がる衝動は痛みによって塗りつぶされる。
あぁ、ちなみに、と惑利は言葉を続けて。
彼は身体を屈めて、苦痛に絶叫する祥悟に声を落とす。
ここからが重要なのだと祥悟に聞こえるように、さらなる絶望へと叩き落すように。
「あなたを主人と認めたのは無の黒騎士ヴォイド。しかし新たに生まれるシャドーがあなたを主人と認めるとは限らない……」
「ぐ、ぅ……ま、さか……あ、が」
痛みに悶え苦しむ祥悟は惑利の言葉の断片を拾い上げて自らの状況を理解する。
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