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「そういえば名前聞いてなかったよね。私は花澤 詩音(はなざわ しおん)、詩音でいいよ。キミは?」
「……霧島 琉斗(きりしま ると)」
相手から名前を求められるなんていつ以来だろう。
妙な気分だが、悪い気はしない。
そもそも、学校で問題児扱いの俺には友達なんて言える同級生はいなかったし、人と会話なんてめったにしていなかった。
信頼できる友人は六年前に引っ越したあいつくらいで、それ以来友達なんてできたことはない。
―――そんなんだから色んな奴らに目を付けられるんだが……。
「そう、琉斗くんだね! ここじゃ危険だから私達の本部に行こ? 歩きながらキミに起きていることを説明してあげるから」
そう言って詩音は俺の前を歩き出した。
身体中に取り付けてある銃器がぶつかり合い、ガシャガシャと重々しい音を奏でている。
一見重そうで機動力を失いそうな装備だが、彼女は至って平然と歩みを進めていた。
きっと詩音にとってはこれが日常の姿なのだろう。
普通の生活をしていれば見ることはないその異質な後姿を追って歩いていく。
「いきなりだけど"神隠し"って知ってる?」
歩き始めてから急に出された突飛な質問がこれだった。
確か詩音は今俺に起きている状況を説明してくれると言ったはずだが、その"神隠し"が一体何だというのだろう。
質問に対して心当たりがあるとすれば、新聞やニュースで最近報道されている“行方不明者増加”についてだろうか。
メディアによってはその事件を"神隠し"と称しているものも多いのだが……
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