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「えーと……ある日突然行方不明になったりする事件のことだろ? 最悪手掛かりが掴めなくなってそのまま見つからないっていう」
「そう、それがまさに今キミに起きていることだよ」
「…………は?」
口をあんぐり開けたまま思考が止まった。
意味が分からない、俺があの神隠し?
突拍子もないワードが頭の中をグルグル回る。
「驚いた? キミのいた世界、現世って言えばいいのかな。そっちから見ればキミは"神隠し"になってるってこと。止まらないで歩いて歩いて!」
歩くことさえ忘れて棒立ちになった背中を軽く叩かれ、再び俺と詩音の足が動き始める。
本当だったらゆっくり状況を整理して話を聞きたいところだが、化け物が蔓延るこの世界で同じ場所に留まり続けるのは危険なのだろう。
しぶしぶの詩音の後ろをついて行くと、それを確認した彼女は再び語り始めた。
「“神隠し”の主な原因は現世から空間の歪みを通じて現世の裏世界……この"アンダーグラウンド"に辿り着いて、帰れなくなること。空間の歪みに巻き込まれてこっちの世界に来ちゃったら手がかりは残らないし、"神隠し"って言われるのも無理ないかな」
「現世の裏世界"アンダーグラウンド"?」
「うん。朽ち果ててよく分からないかもしれないけど、そこの建物も現世と同じ物だよ。それにこの世界が位置するのはまさに現世の真下。だからアンダーグラウンドって私たちは呼んでる」
確かにここに来て周囲を見回したとき、ビルの配置が現世と同じように思えた。
やっぱり気のせいではなかったらしい。
現世の裏世界と言われれば素直に納得してしまう。
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