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「この"アンダーグラウンド"は現世との関わりがとても強いの。さっきキミに襲いかかった化け物"シャドー"っていうんだけど……何から生まれるか分かる?」
俺を襲った巨大な黒い化け物“シャドー”。
思い出すだけでゾッと全身の毛が逆立った。
そもそもこのアンダーグラウンドのことも分からないのに、化け物の正体なんて分かるはずがない。
それでも唯一答えられるとしたら、
「……影の化け物?」
「んー、ちょっと惜しいかな」
事実、俺の影からシャドーが現れたのだからそう答えるより他ないだろう。
詩音は細くしなやかな指で自分の唇をなぞって、一呼吸置くと正解を口にする。
「現世の人間の"心の影"、だよ」
「“心の影”?」
そんな形もない曖昧なものからあんな恐ろしい化け物が生まれるのだろうか?
にわかには信じがたい話だ。
しかし、このアンダーグラウンドの存在自体がすでにイレギュラーなのだから、彼女の言葉を疑うことはできない。
シャドーという化け物が存在する以上、生まれてくる過程は必ず存在するのだから。
「心の影っていうのはいわゆる、悲しみ、怒り、恐怖、嫉妬、憎しみ……いろんな負の感情のことなの。それが混ざり合って出来る化け物がシャドーなんだよ」
淡々とシャドーについて説明する詩音の顔はどこか悲しげに見えた。
心の影から生まれる化け物シャドー。
人間の醜い感情から生まれてくる化け物と理解しても、あまりいい気はしない。
俺の影から生まれたあのシャドーは、きっと自殺まで追い込まれた俺の負の感情が生み出してしまったんだ。
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