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確かに俺は死のうとしていた。
あの大きなシャドーを生み出してしまうくらい追い詰められて。
もう誰にも迷惑を掛けたくなかったんだ。
けど、それでも……心のどこかでは死という選択を拒みたかった。
―――どうして俺が死ななくちゃいけないんだ?
―――おかしいのは俺の周りにいる奴らだ!
―――俺が死ぬ必要なんてない!
叫んでやりたかった。
心の内に秘めていたこのわずかな抵抗を。
あのシャドーは確かに俺の心の声を叫んでいた。
あれはまさに俺の心そのものだったんだ。
「死んじゃだめだよ? 無くしていい命なんてこの世のどこにも有りはしないんだから」
優しい声色で、彼女はゆるりと微笑んだ。
その言葉と笑顔を見た瞬間、追い詰められていた心の重荷が軽くなった気がした。
こんな言葉を俺はずっと待っていたのかもしれない。
目が熱い。視界がぼやける。
涙を見せるのが恥ずかしくて、とっさに腕で涙を拭った。
「な、なんで俺なんかに……」
「んー、私の仕事っていうのもあるんだけど……琉斗くんが私に似てるから、かな?」
―――俺に似てる……? それに仕事って……?
そういえば詩音の正体について名前以外は何も知らない。
出会ったばかりでまだ他人同然だというのに、もう少し彼女のことが知りたくて気付いたら言葉が先に飛び出していた。
「あ…あの……!」
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