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「あっ、ちょっと待ってね。はーい、こちら詩音。どうかした?」
意を決して詩音の正体を尋ねようとしたが、彼女の腕に取り付けてある通信機らしきものからピピッっと音が鳴った。
恐らく仲間からの通信だろう。
―――どうして俺はいつも間が悪いんだ……。
『おぉ詩音か! よかった出てくれて!』
僅かに音声が聞こえる。
この声色は男の人だろうか。
『それがよ……。わりぃ! シャドー逃がした!!』
「えぇっ!? もぉー何してるのー!!早く追いかけて討伐して!!」
『今バイクで追ってる! それでシャドーの現在地を考えると俺よりも詩音の方が近い。出来ればそのまま倒してくれ! すぐ行くからよ!』
「はぁ、了解ー」
詩音は通信を切り、大きくため息をつきながら俺の方に顔を向けた。
「あはは、えーっと、その……うちの間抜けな人がシャドー逃がしちゃったみたいで……。で、でも大丈夫!! 私が絶対倒してみせるから!! けど、一応琉斗くんも用心して……」
その時だった。
詩音の背後に大きな影が覆い被さったのは―――
「……っ!?」
いつの間にこんなに近くにいたのだろう。
先ほどのシャドーと似ているが速さが桁違いだ。
巨大な鋭い牙が彼女に襲いかかろうとしている。
そして、詩音はまだシャドーの存在に気付いていない―――
「危ないっ!!」
「きゃっ!? 琉斗く……」
俺は何をしているのだろうか。
身体が無意識のうちに詩音を押し退け、彼女を守るようにして両腕を広げていた。
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