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「……度胸ねぇな、俺」
情けなさに自分への愚痴がポロリと零れた。
ただでさえ色んな人に迷惑をかけているのに消えることすらできないのか、と弱い自分に嫌気が差す。
このままじゃ駄目だ。
こんな状態じゃ、ひと思いに飛ぶこともできない。
「そうだ……」
―――怖い、怖い、死にたくない!
「まだ時間はあるんだし……急ぐ必要はない……」
―――どうして俺が死ななくちゃいけないんだ!
「もう少し気持ちを整理してから―――」
―――俺は何も悪くないのに……!!
「う……うぅっ……!!」
逃げたい素直な気持ちがノイズのように心をかき乱す。
それを聞こえないように自分の耳を塞いで、下唇を噛んだ。
「今度こそ俺は度胸を見せるんだ……今度こそ……俺なんか消えた方が……」
直後。
ズルリと、嫌な音がした。
両足に感じていたはずの地の感覚が消える。
足が浮いたと錯覚した途端、視界が反転し、身体が宙に投げ出されていた。
「しまっ……!?」
突風が吹いて屋上から足を滑らせたと気付いた時には、もう遅い。
グルグルと視界が回り、落下に伴う風が勢いを増す。
「ま、て……まだ心の準備が……っ!」
待ったなんて言葉が聞き届けられるはずも無く、重力に従い身体は下へ下へと落ちていく。
「―――あぁくそ!! もうどうにでもなれ!!」
ぐんぐんと地面が近づき、これから来るであろう衝撃に備えてぎゅっと目を閉じた。
落ちる
落ちる
落ちる
そして俺は
地面を
すり抜けた────
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