1857人が本棚に入れています
本棚に追加
―――なんだ? この違和感は……
そろそろ地面に衝突してもいい頃合いだが、ぐしゃりという潰れる感覚も痛みも、何も感じない。
落下の最中、一瞬やわらかな空気の渦をすり抜けた感触があったが、それ以降痛みも落下に生じる風さえも感じなくなっていた。
もしかすると、痛みを感じる間もなく死んでしまったのだろうか?
本当に死んでしまったのなら、この先に広がる景色はきっと死後の世界なのかもしれない。
湧き上がる恐怖をぐっと抑え込んで、そっと目を開けた―――
「は、ぁ……?」
赤、赤、赤―――
そこには真っ赤に染まった異質な空が世界を覆い尽くすように広がっていた。
そして、その中に悠然と浮かぶ一際大きい赤い月が、強い存在感を放っている。
「赤い、空……っ!? って俺宙に浮いてる!?」
異質な世界に圧倒される暇もなく、今度は自分の状態を理解して思考が空回りした。
先程までは確かに地面に向かって落下していたはずなのに、今は仰向けになって空を見上げる状態でふわふわと宙に浮いている。
と、それを認識したのもつかの間。
「ぎぃゃああああッッ!?」
身体が急降下。
驚いて悲鳴を上げたが、実際にはそれほどの高さはなく腰を打つ程度で着地した。
「イタタ……なんだここは?」
痛みが多少後を引くが、まずは冷静に状況を確認。
腰をさすりながら周りを見渡すと、辺りには黒く崩れかけたビルが立ち並び、その瓦礫が周辺に散らばって瓦礫の山があちらこちらに点在していた。
最初のコメントを投稿しよう!