能力

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幟季さんは適当に狂也の文句に付き合うと、倒れているギートを担ぎ上げ、再び俺の方へを向き直った。 「ごめんね、琉斗くん。本当ならもう少し時間を作ってあげたかったんだけど……この状況じゃ難しそうだ。どうだろう、今から僕達と一緒に本部に来てもらえないかな?」 「え?」 「大丈夫、時間はとらないよ。今はこの場から離れることが重要だからね。狂也くんにも見られちゃったし、援軍でも呼ばれたら面倒なことになりそうだ」 確かにこの場を離れることは重要だろう。 こうして狂也が現れたのが偶然ではない以上、これから先何が起こっても不思議じゃない。 どうせ連れていかれるなら、訳のわからない連中よりも、信用できる人がいる組織に行った方がまだマシだ。 それに俺のせいでギートはこのありさまだ。 彼をこんな目に合わせた以上、選択の余地はない。 「分かった。行くよ」 「ありがとう、琉斗くん。じゃ詩音、空間を繋げてもらえる?」 「はい!」 詩音が何もない場所で真っ直ぐ手を伸ばすと左手に装着された腕時計が"ピリッ"と赤い光を放ち、円を描いて空間が歪みだした。 「さぁ、飛び込むよー! あまり長くは空間を歪めてられないからね!」 そう言うと幟季さんはギートを担ぎ上げたまま、一息に歪んだ空間の中へ飛び込んでいった。 時間が無いと言ってもこんな異質な空間に身を投じるなんて怖くてできない。 どういう原理なのだろう。 途中で身体がバラバラになったりしないだろうか? そんな不安がグルグルと回る最中、 「琉斗くんも行くよ? それっ!!」 「ちょっ……うわぁぁぁぁぁ!!」 心の準備もできぬまま、女子らしからぬ力で背を押された俺は頭から渦巻く空間へ吸い込まれた。 今度は自らの意思でもう一度、あの異質な赤と黒の世界へ飛ぶ。 現世の裏の世界、アンダーグラウンドへ。
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