3#ムーニの友達

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 母グマを人間に殺されたツキノワグマのムーニは、やっとの思いで元いた山林にたどり着いた。  いつも寄り添ってくれる母グマはもういない。そう思うと、ムーニの心は張り裂けそうになって寂しくなった。  ムーニは母グマが死に際に言った「あなたはひとりでやっていける。もう甘えるんじゃねぇ!」の意味を考えていた。  ・・・僕は本当にひとりで生きなければいけなくなったんだ。全部自分で食べ物を探して穫って生きなければいけない。僕にはそれが本当に出来るのかな・・・     ムーニは心細くなった。しかもムーニはお腹がすいていた。     「何か食べなきゃ!でもどうやって?お母さんに教えられたことをやればいいんだ!」  ムーニはお母さんの幻影を振り払うように一目散に走り、早速餌探しをすることにした。 ・・・もうお母さんは帰って来ない!もう僕は『ひとりだち』したんだ!僕のことは僕でやらなきゃ!・・・  ムーニはドングリを探した。ブナの木の下を鼻でクンクン嗅いで、落ち葉を鼻や脚で払ってドングリを探した。  ブナの木の上でリス達や小鳥達がみなしごツキノワグマのムーニを見つけ、ひそひそ話をした。  「またクマが人里に降りて人間にやられたらってさ!しかも親子連れだって!可哀想に親グマは人間に殺されたって!」  「で、今木の下でほっつき歩いてるのがその小熊でござい。」  「親が襲われているのに何で見捨ててノコノコと帰ってくる神経が判らないね。普通なら親を助けるために人間に向かって来るのが常識だろ?」  「根性無しだね!あの小熊。」  「そもそも親が人里に降りること自体が悪いんだよ。やられるのは誰にも判るのに、何でわざわざ。ま、自己責任ってことで!」「自己責任自己責任!」  「うるさい!」ムーニは激怒してブナの木を揺らした。  「うはー!お前そこにいたの?ごめんごめん!」ブナの上のリスや小鳥はムーニに嘲笑いながら言った。  ムーニの足元にドングリがいっぱい落ちてきた。しめた!結果オーライ。ムーニは落ちてきたドングリを夢中で頬張るといきなり、  「ひとのドングリを穫るな!この卑怯者!!」とドングリをいっぱい投げつけてきた。痛い!ムーニはそのドングリを拾う気もなく急いで逃げ去った。  ムーニは今度は川で魚を穫ることにした。用水路に通じるこの山沿いの川は魚も泳ぐし、よくシラサギが魚を穫りに来る。
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