4#燻り出されるクマたち

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 「ちょっと待って!喧嘩する暇あるの?僕らは今どんな状況にいるか分かってるの?」  こちとらぐっすり冬眠ってる途中に起こされてイライラしてんだよ!」「それはお互い様だよ!」「出て行けよ!!ここは俺の隠れ場所だ!」   喧嘩に滅法弱いムーニはブーウの強烈な張り手の応酬や力技で押され気味だった。そしてブーウの鋭い爪がムーニの体にグサリと刺さり、余りの痛さで負けを認めて降参しようとしたとたん・・・  ガン!!  後ろからハンターがブーウの脳天に鉈を振り下ろした。  ブーウのこめかみから大量の血吹き出して、ムーニの体に刺さったままの爪はガッ!と引き裂いてグッタリと倒れこんだ。即死だった。  今度はムーニに鉈の攻撃の標的になった。全身血まみれのムーニは激しい痛みも感じぬ位の恐怖した。  追いかけられ何度も振り下ろされる鉈を交わし、必死に藪の中を走り出回った。突然、鉈が飛んできた。すんでのところでムーニは交わし、鉈は木に勢いよく直撃した。怯える間もなくムーニは逃げた。  ムーニは立ち止まった。一頭の雌のツキノワグマ・・・いつか一緒に結婚して、小熊を作ろう!と冗談半分に言ったらOKをしてくれた雌グマのフワだった。 「フワ・・・大丈夫?」 「ムーニさんは・・・?」「大丈夫だよ・・・」 フワの体を見てムーニは絶句した。  フワの体には全身に銃弾の跡があった。箱罠にいたらしく前脚の爪は折れ、血が滲んでいた。フワは箱罠からにげだそうとして何度も体当たりして、運良くその拍子に脱出出来たのだろう。フワの字と体をよく見ると、腹が膨れていた。銃弾の跡のないこの腹の中には赤ん坊がいたらしく、何とか銃弾を赤ん坊だけ守ろうとした執念が伺えた。しかし箱罠で体当たりした時のダメージもあり、赤ん坊の命の保証は無い状態だった。 ムーニは何で僕じゃなくて他のクマと・・・という感情と、その雌グマのフワが子を宿したまま死にゆく無念さに胸が詰まった。 「ごめんね・・・ムーニさん・・・私・・・他のクマと・・・本当にごめんね・・・」フワは息も荒く絶え絶えにつぶやいた。  「いいよ・・・フワ・・・他のクマと結ばれたなら僕は・・・それよりフワ・・・お腹の子供のために生きて・・・」  雌グマのフワは息絶えた。ムーニの前脚に抱かれて、そしてお腹の子供も・・・  
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