5#孤独のムーニ

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 ムーニの心は狂いそうだ。死んだムーニのツキノワグマ仲間が噂していた、巣にありつけなくて冬眠出来ない“穴持たず”の気持ちがひしひしと分かった。  「こうやって僕も“穴持たず”になって狂いまくって人里に出て、人間に・・・なんで?なんで僕が?!」  ムーニは自分が“クマ”という存在であることに畏怖した。・・・僕が人間だったら・・・何で僕を“クマ”として生まれてきたんだ!!・・・  ムーニは自らの前脚やがっしりと生えた爪や尖った口元と鼻、ずんぐりとした体を恨んだ。やっぱり僕は“クマ”として生きるしかないのか。“クマ”なんだから・・・  ムーニは針葉樹の林を照らす月を見つめてた。 そして、ムーニは思い切り息を吸い込んで、  ぐおおおおおお!!!!  と吠えた。  僕は“クマ”だ!“クマ”として生き抜いてやる!それが失われた仲間への弔いだ!!  夜闇の空から舞い降る白すぎる雪がムーニを襲う。  「う~寒い・・・!本当なら僕は巣穴で冬眠しなくちゃいけないのに。まいったな・・・早く“居場所”を探さなきゃ!そうしないと僕まで凍え死んじゃう!!」  ムーニは悴む前脚を息ではーはーと吹きかけたり、後脚をぶるぶると震わせて暖めながら、雪原をとぼとぼと歩いた。  ゴン!  雪で前が見えないムーニは針葉樹にぶつかった。その拍子にバサッと針葉樹の幹に積もった雪が大量にムーニを覆い被した。  「ぶはっ!」全身雪まみれになったムーニはなんとか脱出して身震いして体の雪を払った。  今さっきの雪であのブーウに付けられた背中の爪跡が染みる。・・・そうだなブーウ。君はこの背中の傷の中に生きている・・・ブーウのため、フワのため、クマ仲間のため。僕はみんなの分まで生きねば!  ムーニの信念は雪をも溶かすように心の中で熱くなった。
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