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ムーニはまだ巣穴を探していた。
冬眠の続きが出来る巣穴を。無いと本当にムーニは“穴持たず”になって気が狂いそうだ。
ムーニの目は眠気でとろーんとした。 本当はムーニが自ら穴を掘りたいのだが、そんな気力はムーニにはない。しかもこの冷たい雪の銀世界だ。ただでさえムーニの脚があかぎれてているのに、更にダメージが大きくなるからだ。
ムーニは茂みの奥や崖を鼻や前脚で雪を掻き分けて探して・・・探して・・・あった!昔アナグマが使っていたと思わしき立派な巣穴!
「まだもしかすると、アナグマが住んでいるかも知れないなあ・・・緊張するなあ・・・」
ムーニは鼻でクンクンと巣穴の匂いを十分に嗅いだ。そして深く深く深呼吸をして、思い切って、
「お邪魔しま~す!」
誰もいない。良かった。
早速ムーニは巣穴の奥に入りこんで丸くなり、これで一安心。ぐっすりと眠った。
春になった。とても静かな春だ。野鳥も少ない。鳥インフルエンザが蔓延して殆ど数を減らしてしまった。更に鳥インフルエンザにかかってない野鳥さえも、予防するという観念から人間に処分されてしまった者もいたからだ。
ムーニは毎年はツグミやキビタキの声で目を覚ますが、今回は、
グイッ!
「ん?」
グイッ!グイッ! ムーニの背中を押す。グイッ!
「痛ーっ!」ムーニの背中の古傷を何かが触れた。
「何するんだよ!」
「苦しい~~っ!誰だぁっ!オイラの巣に断りも無しに入ってきたのは!」
ムーニの大きな背中からムクムクと迷惑そうに這い出たのは、一頭のアライグマだった。
「お前は誰だ!」 「そちらこそ誰だ!」
そのアライグマとムーニは顔を合わせた。
その時、アライグマはツキノワグマのムーニの鋭い牙と大きな鼻から飛び出た生暖かい鼻息でくたっ気絶した。
「あれ?どうしたの?君?」
「・・・目覚めたね」ムーニは気絶から目覚めたアライグマの顔を見つめた。
「ひいっ!食べないで!」
「別に君は食べないよ。お腹すいてるけど。僕の名前はツキノワグマのムーニって言うんだ。冬眠先が人間に襲われて、で・・・」
「そうなんだ・・・おいらの名前はアライグマのナサリーというんだ!よろしくな!」
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