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ムーニはナサリーの壮絶な話を聞いて目から涙がポロリとこぼれた。
「そうだったんだ・・・」
「おいらの息効いたな」ナサリーがニヤリとした。
「違うよっ!」ナサリーの吐息が鼻の穴に入ってくすぐったくて、たまらずポリポリと爪でかきながらムーニは答えた。
「でも僕の肺活量は君より上だからな。」とツキノワグマのムーニはぼそっと言って、「じゃあ、今度は僕のことを言うよ。」とムーニの今までの体験をナサリーに聞かせた。
ムーニの母グマが目の前でハンターに射殺されたこと。
ムーニの友達のプックが人里にでて殺されたことを期に、開発が進んでいた生まれた故郷の山を捨ててこの山に来たこと。
そして冬眠中に起こった人間の不意打ちのクマ駆逐事件で仲間を全部失ったこと・・・
その話をまざまざと聞いていたアライグマのナサリーは絶句して、目から涙がボロボロ止めどなくこぼれた。
「・・・君は僕より地獄を見てきたんだ・・・」
「それ程でないけど?」ムーニは言った。
「あんたは強いね~!」アライグマのナサリーは鼻面でツキノワグマのムーニのおでこにちょん!と突っついた。
「やったな~!」今度はムーニが爪でナサリーのおでこにちょん!と突っついた。今度はナサリーがムーニをくすぐり、ムーニがナサリーをくすぐり、そしてお互いのくすぐり合いっこになって笑いあった。
ムーニとナサリーは巣穴から出て、すっかり雪が溶けた春の暖かい日差しの中で互いにじゃれあってふざけあった。
・・・僕にいきなり友達が出来た!僕より少し体の小さい友達!互いに似たもの通し!僕はもうひとりじゃない!生きてて良かった!ありがとうナサリー!・・・
ムーニは喜んだ。
ナサリーも喜んだ。
互いに友達。
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