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「おいらが・・・死ぬ前に・・・言いたいことがある・・・」
「何で?死なないで!」ムーニは涙声で叫んだ。
「でもおいらはもう長くは持たない・・・・もう駄目なんだ・・・」
「駄目って・・・」
「おいらの話をちゃんと聞け!」ナサリーはブクブクと止めどなく吹き出す泡を飛ばして怒鳴った。
「あの時・・・ムーニさんを怒ったのはおいらを捨てた人間と態度がだぶったからだ。それもあるが・・・実は・・・ムーニさんに構って欲しかったんだ・・・ムーニさんをワザと困らせてやろうと・・・それが・・・この結果だと・・・本当に自己責任だよ・・・おいらの・・・でも・・・もしムーニさんが・・・この毒団子を食べたら・・・と思うと・・・本当に最後にムーニさんを守れて・・・よかったよ・・・」
その時、ブハッとナサリーの口から大量の血を吐いた。
ムーニは青ざめてた「もういいよ・・・もう喋らないで!」
「それに・・・ムーニさんに・・・一緒にアメリカに行こうと言った・・・のは・・・一緒になる仲間を欲しがったからで・・・アメリカは・・・海の向こうの・・・遠く・・・遠く・・・」
突然ナサリーの体がピーン!と引きつけを起こし硬直した。
「どうしたの!ナサリーさん!もう一度一緒に野山を走ろうよ!一緒に木の実を拾いにいこうよ!一緒に魚を穫りにいこうよ!一緒にタンポポ飛ばそうよ!ナサリーさん!しっかりしてナサリーさーん!!」
アライグマのナサリーは事切れていた。
ナサリーの死に顔はまだ死にたくないという無念の悔しさで目を剥いており、前脚の先は遠く空の海の向こうを差していた。
ナサリーは自分の本来いる所のアメリカに行くことを夢見て、叶えられずに日本で死んだ。
「ナサリー・・・ナサリー・・・ごめんよ・・・僕が君のことを何も分かってなくて・・・」ツキノワグマのムーニはアライグマのナサリーの亡骸の前で目から涙をこぼしながらつぶやいた。
ふとムーニは振り返り、は涙目で草原に種の綿毛がまだ一つ残っているタンポポを見つけた。
ツキノワグマのムーニは深く深く息を吸い込み、優しくふ~~~っ!!とタンポポの綿毛にありったけの息を吹きかけた。
そのタンポポの綿毛はまるでナサリーの魂が天国かナサリーの故郷、アメリカに向かって行くようにふわりふわりと飛んでいった。
ムーニは胸が詰まる思いで涙声を張り上げて叫んだ。
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