1#消されるクマたち

3/3

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
 ムーニは嘆いた。ただショックだった。ムーニは泣いた。わあわあ泣いた。  僕の友達が次々と・・・あの街で・・・いや、あの街だけでない。前にいた山林でも次々と仲間のツキノワグマが人里に出ては人間に射殺された。全ては『人間の安全な生活』を守るためにだ。ツキノワグマは人間にとって人間の食べ物を食い荒らし、更に人に手をかけて危害を加える『害獣』と見なされ、『この世から存在してはいけない奴ら』として『排除』される。全て人間本位で。  これがムーニの人間が大嫌いな理由だった。  ムーニは人間を憎んで生きていた。かと言って人間に手をかけて復讐したいとは考えなかった。逆に手をかけたクマは軽蔑した。人間に射殺されても仕方ない行為だと思っていた。ただし、ムーニを助けるために人間を傷つけてしまったムーニの母グマと、前にいた山林での唯一の理解者であり人里に行くのを止められなかったムーニの友達以外は・・・  だが、そんなムーニも心許せる人間に出会い、自らも人里に出てしまうとは、この時はまだ思っても見なかった。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加