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「キビタキのチピ奴か・・・あいつは死んだよ・・・」
「ええっ?!」
「あいつは鳥インフルエンザにかかっているのではないか?と疑っている人間に処分された!」
「ええっ!」
「何で何も病気してないのに人間ね犠牲にならなきゃいけないんだ!人間は何を考えているか分からない。例えばあの崖の下を見ろよ!」
ムーニは崖の下を見た。ええっ!
崖の下は一面の産業廃棄物置き場になっていた。そこからムーニの鋭い嗅覚さえも衰えさせる位の悪臭を放ち、たまらなく鼻の穴を前脚で抑えた。
「これが人間ってもんだ!人間はてめえらが良ければそれでいいと思ってるんだ!お前さんも、だいぶ人間の被害に逢ってるらしいからな。分かるぜその気持ち。じゃあ、お前さんはひとりじゃないからな。俺も応援してるからさ。あばよ!」
モズのヨンはフラフラと産業廃棄物の匂いに咳き込みながら飛び去った。
ムーニ産業廃棄物置き場のあるこの崖に沿った道をトボトボとうなだれて歩いた。
ムーニは歩きながら考えていた。このままいったら、僕の身の回りの世界が破滅するなあ。全部人間の介入のせいで・・・そして僕は・・・?僕はどうなるんだ?!
空からポツ、ポツ、と雨の粒が落ちてきてやがて夕立になった。
たちまちムーニはずぶ濡れになった。
ムーニはどこか雨宿りする場所を探した。
ムーニは打ち捨てられ、ボコボコに破壊されていた放置車を発見して、そそくさと潜り込んだ。
痛い!ムーニは放置車の車内の割れたガラスに脚の裏を切った。ムーニはたまらず放置車から飛び出した。
ムーニは血が滲む脚の裏を庇いながら今度は放置車のトランクに潜りこんだ。
トランクの中にはゴミがいっぱい入っていたが、なんとかどかして雨宿り出来るようになった。
激しく降りしきる土砂降りの雨・・・ シャッ!
突然何かがムーニに遅いかかった。
この車のトランクの先客がいた。餓えた野良猫だった。
野良猫は見知らぬツキノワグマに向かって脚の爪を出して執拗に襲いかかった。
ムーニは狡猾な野良猫に応戦したかったが、無益な闘いをしたくなかった。
ムーニはたまらず
「ごめん!ごめん!そこにいるとは思わなかった!許して!ぐおお!」
と喚きながら、放置車から命からがら逃げ出した。
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