始まりは突然に、知らないうちに・・・

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「ま、何にしろ全員無事に帰れるよう頑張ろうぜ。120万ごときの仕事で大怪我でもしたら、バカバカしくて鼻血も出ねェや・・・なぁ」 皮肉屋のザビエルは、マイスを見ておどけて見せた。 「そうだね・・・近頃、やたら凶暴な魔物が増えていると聞くから」 マイスはザビエルの言葉に頷き、最近聞いた噂を口にする。 「らしいな・・・。西の小国『バルサスター』が、突然凶暴な魔物の一団に襲撃されて、かなりな被害が出たと聞く」 ラカードも、その噂は知っていた。 職業柄か、確かにここ最近、凶暴な魔物の話をよく聞く。 噂によると近隣の村でも『自警団』が常に警戒しているという。 『バルサスター』に至っては軍隊でも間に合わず、近隣の『ハンター』まで雇って対処したというから相当なものだったのだろう。 「この『ガラスの塔』が突然魔物の巣窟になったのも、何かの影響かな・・・」 何を思っていたわけでもなかったが、不意にマイスは口にする。 無意識に近い言葉であった。 ・・・が、理由がある。 マイスは先程から、『ガラスの塔』に妙な禍々しさを感じていたのだ。 何とも言えない嫌な感じ・・・。 腐臭と血の臭いの混じる死体の山の中を、延々と1人歩き続けるかのような・・・。 マイスは正直、今回の仕事はあまり気乗りしなかった。 最初は何となくだったが『ガラスの塔』に近づくにつれ、その気持ちが大きくなっていった。 「何かの影響・・・か・・・。そうかもね。とにかく、皆で無事に帰れるよう頑張りましょ?」 ジェラルミンがマイスの言葉に同意し、明るく言いながら横目でちらりとマイスを見る。
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