プロローグ

8/8
前へ
/138ページ
次へ
何かを含んだ笑みを浮かべてミキは言う。 「顔、前と全然違う。ミキだって気付かなかったよ」 雰囲気と仕草を除いたらまるで別人な程に彼女は変わった。 「うふふ、ありがとう」 ミキは嬉しそうに笑った。 強い風が吹く。 彼女はうわっ、と唸って風に流れる長い髪の毛を手で押さえる。 その時僕は、彼女のその姿そのままを自分の部屋で見たことを思い出した。 正確には見たんじゃない、描いたんだ。自分のこの手で。 彼女は僕が途中まで描いた、「春」をモチーフにした絵の女の子にそっくりだった。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加