始まり

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…………………。 沈黙が続く。 僕は耐えきれなくなって、言葉を紡ごうとした口が不意にとめられる。 「あなた……、だぁれ?」 先を越された。 もちろん、人見知りの僕は、前触れもなく聞かれて、軽くパニックを起こした。 「ぁ……、え……?」 だが、 そのあとに発せられた言葉に、僕は固まった。 「……私…、誰?」 冷え固まった頭を高速で解凍しながら、フル回転させる。 記憶喪失!? そ、そうだっ!! 名前はっ? 「ぁ……、な、名前はっ?」 「ナマエ…?」 え、いや、聞き返されても…。意味を説明しろと言うのか? 「ナマエ…、ないの。」 「ない?」 目の前にいる名無しの少女に、緊張が解れていくのを感じた。
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