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2)原爆死没者慰霊碑
<簡単な『原爆死没者慰霊碑』の説明>
平和祈念式典などで映るのでご存じの方も多いかと思います。
はにわの家の形をしているというアーチ型のやねに護られて、慰霊碑が置いてあります。
そこに刻まれた碑文はこうです。
『安らかに眠ってください。
過ちは繰り返しませぬから』
――この碑文に関しては様々な物議が発表当時から持ち上がっていたそうです。
『過ち』の捉え方、それを犯した『主語』が議論に上がったらしいんですね。
つまり、第二次世界大戦や太平洋戦争を起こした日本に『過ち』があり、それを日本人が恥じた文章だとする捉え方や、原爆投下すら広島市民達に罪があったのか、という反論ですね。
ただ、私はそういう意味ではないと思っています。
落としたアメリカが悪いとか、戦争をやめなかった日本が悪いとか、そんな小さな文章じゃない。
原爆投下とそれによってたくさんの犠牲が生まれたこと――それそのものを生んだ戦争自体が『人類全体』の『過ち』なんです。
だから、安らかに眠ってほしいと言う死没者への祈りと共に誓うんです。
決して私達人類は、もうこんな過ちは繰り返しませんから、と。
これは、碑文公開当初からの物議に対して、市長が抗議し続けてきた内容とも合致しているため間違った解釈ではないと思います。
現にこと核や平和に関して日本政府がほとんど機能していない現状において、一市長にすぎない広島と長崎の両市長は、大国に対しても断固たる姿勢で核実験などへの批難を示しています。
それは立派にこの碑文に載せた誓いを体現しようとしている表れだと私は思います。
(資料館の東館には、今まで行われてきた全ての核実験への批難文のコピーが印字された金属のプレートが、壁何面にも展示されています。
このプレートの数が増えることが止まる日は……残念ながらまだまだ遠そうですね)
私は広島出身ではないですし、ルーツがあっても親類で被爆した人がいるわけでもない。
だから本来この碑文に対しての物議に参加するべき立場ではないのかもしれません。
ただ、もっともっと大きな視点で、人類として何が正しいのかを考えてほしい、とは思います。
少なくともそれを考えたなら、碑文が気に入らないからとペンキで塗りつぶしたり、碑石自体を持ち去ったりすることが正しいと思うはずがないですから。
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