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「しかし前回は膵臓(スイゾウ)でしたっけ? で、今回は右腕。犯人は本当に何がしたいんですかね?」
自分の想いを打ち消すように質問を投げかける。林檎はそれに対して楽しそうな表情で答えた。
「人間でも作りたいんじゃない」
「いや、林檎さん、それはいくらなんでも――」
林檎の目をみて思わず言葉を詰まらせる。まるで捕まえた虫の羽根を毟りとるような純粋な好奇心。そして玩具を前にした子供のように輝く瞳。
林檎は、純粋にこの事件を、いや、人の死を楽しんでいた。
「ははっ、冗談だよ神崎くん。そんなに露骨に嫌な顔しないでよ」
「それはそのニヤケ顔をなんとかしてから言ってくれません?」
思わずため息をついてしまう。林檎はネコのような目で微笑を浮かべながら、
「神崎くんは嫌な事を正直に言ってくれるから大好きだよ」
と言った。
その体躯に似合わない妖艶な笑みを浮かべいる林檎は、あと10年もすれば完璧な美女になることだろう。しかし生憎ロリコンの趣味はない。
だが、その瞳も、言動も、性格も、体躯以外の全てが、見た目とはかけ離れている。変わった子、ではなく異端児と呼んでも良い。
もっとも、林檎と関わってしまった以上、自分も世界から隔離された異端者という事は十分に理解している。
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