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「変な事言ってないでこれからどうするのか教えてくれません?」
「そうだね……そろそろ帰ろうか神崎くん」
突然、林檎はそう言うと身を翻してさっさと歩き出す。長い髪が風に吹かれて踊る。人間とは思えないくらい艶やかな髪がかすかに甘い匂いを撒き散らした。
「はい? なら俺はなんで呼ばれたんです?」それも深夜に……
「ん? 実は今日は何故か体調が悪くてね……誰かを怒らせたかったの。まぁ君は不思議と怒らなかったんだけどね……」
林檎はなんでもなさそうにそう言う。
俺としては理由が規格外過ぎて怒るに怒れなかった。体調が悪くて誰かを怒らせたいとはなんとも林檎らしい。
「というのは冗談でね。僕も祭りに参加しようと思ってさ。ほら、従業員になんの説明もしないのは駄目でしょ?」
そう言うと林檎は3つ目のキャラメルを口に入れる。
「祭り?」
絶対に冗談ではなく本心だと思ったが深くは追及せずにボクが聞き返すと、林檎はその妖艶な笑みを顔に貼り付けたまま
「祭りだよ、無差別連続殺人。しかも死体は必ずどこかのパーツが無くなっている。実に僕好み」と言った。
「林檎さん、あんたって人は本当に最低ですね」
自分の中で最大級の嫌みを込めて言ったのだが林檎はフフッと笑うだけで流してしまう。
「じゃあ、事務所に帰ろう」振り返りそう言った林檎の眼は、ネオンの光を受けて不気味な色をしていた。
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