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数時間後、2人の勇者はほとんど廃人となっていた。
いろいろと試しすぎたかも知れないが、必要以上の苦痛を与えたり、精神が崩壊するようなことはしていない。
「……おい、目が死んでるぞ」
「おいおい、どうしたってんだ。人の家にアポも無しで乗り込む度胸があるのに、ちょっと実験させられただけでへばるのか?」
「度胸は関係あるのか?」
「あるだろ、多分」
それでも、完全に苦痛が無いなんてことは無いだろうな。
全裸で縛り上げられて正座、これを数時間休み無く強制させられ、しかも魔法の実験台にされるんだ。
これだけでも、相当な恐怖になるらしい。
自分はそういう目にあったことが無いが、過去に目にした囚人やそれに準ずる者達と照らし合わせると、多分間違った推測ではない。
「どうすんだ、こいつら。殺す?」
「殺す」の言葉に反応し、2人は懇願するような表情でこちらを向く。
「た、頼むよ!死にたくねぇよ、帰してくれ!」
「あ、あ、謝るから!!」
殺すつもりは、今は無い。
相手が勇者だと言っても、いくら命を狙ってやってきたとしても、流石にこの状況では殺意が湧かない。
「俺達の事を誰にも言わないんだったら、助けてやる。ただし、誰かに言ったと分かった瞬間、2人とも挽肉にしてオオカミに食わせるからな?」
怯えた2人は凄まじい勢いで首を縦に振る。
オオカミを手懐けているわけではないので、こんな真似をすれば俺も襲われるだろうから、チクられたとしてもこんな真似はしないが。
「いいだろう、縄を解いてやる」
縄を解くと同時に、2人は城の外へと走り出す。
そして城から離れるとこちらを振り返り、そして叫んだ。
「絶対許さないからな!必ずぶっ殺してやる!」
「そうか。じゃあ、今殺しておいても問題無いな」
明確な殺意を持って、2人を追う。
何の訓練もしていない人間を取り逃がすほど、俺の足は遅くない。
仕留めるまでの間に、謝罪の言葉が聞こえた気もするが、肉塊にしてから思い出しても遅いだろう。
「ったく、そいつらは森の奥に片付けろよ?俺はヤだからな!」
「言われずとも、自分でやるさ」
実用的な魔法を作れた点は、感謝しよう。
だが最後の言葉で、感謝は帳消しだ。
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