魔王となった日

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親父が死んだ。 泊まっていた屋敷で、その連絡を聞いた。 城を出たのは、僅か数日前だ。 どうやら親父は、従者や兵士共々勇者に狩られたらしい。 城も完全に破壊され、その場に居た者は骨すらも残らず全滅してしまったそうだ。 死に際の誰かが俺へと向けた密書、それで初めて俺は知った。 残ったのは、俺と、俺について来た執事と、この実家の城の倍近い大きさのボロボロな屋敷だ。 それらの他には、本当に何も無い。 僅かな領地、僅かな物資、見知った者は執事だけ。 そんな環境でも、ここならば勇者から襲われずに魔王として生きて行ける、その時はそう思った。 なんの根拠もない、愚かな自信だ。 親を失い、家を失い、この地にはほとんど何も残っていない。 特に、親父が死んだと聞いた時は狂ったかのように泣いた。 だが、そのままでは駄目なのだ。 いつまでも悲しんではいられない。 この世界には何もなくとも、まだ魔界がある。 執事も1人だけだが生き残っている。 まだ終わりじゃない、魔王は終わらない、再興できる、きっと出来る。 すぐに全ては変えられない。 でも大丈夫だ、時間はまだある。 仲間を見つけ、領土を広げ、そして返り咲くのだ。 俺はそれを、心に誓った。
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