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いい加減ゲームに飽きて電源を切った時、奴は現れた。
ドカンと音がしたかと思うと、扉が破壊されているのが目に映る。
そして、「私は雑魚です」と主張する雰囲気をバリバリと出している男が侵入してきた。
不法侵入と器物破損は許さない、万死に値する大罪だ。
「ヤベェ!!ハーピィめっちゃ怖ぇ!」
ハーピィから逃げて来るとは、雰囲気だけでなく実力も雑魚のようだ。
ハーピィは決して強くない、鳥人間とでも言うべき魔物だ。
少々素早いが所詮は鳥人間、モンスターの全体から見ればかなり弱い部類に入る。
頭の中身が人間であればいくらか強かったかも知れないが、残念なことに頭の中身は鳥同然だ。
「お前、誰だ」
「アァ?テメェから名乗れやクズ。俺はバルカンマンってんだ」
「なんだそのクソ詰まらねぇネタに走ったような名前は。お前の親は何考えてんだ」
ハーピィから逃げて来たくせに偉そうな喋り方をする野郎だ。
顔面の皮をベリベリっと引き剥がしてやろうかと思った。
まあ、誰か分からんのにいきなり殺すわけにもいかない。
身分は明かすか。
「俺は魔王ベルーガ、親父が……先代が死んだので、後を継いだ」
みるみる内に顔色が真っ青になり、そして失禁した。
汚い、掃除するのは俺じゃねぇけど。
「そ、そ、そ、そんなぁ!魔王は城ごと吹っ飛んだはずだ!」
「今言っただろ?俺はそのぶっ飛んだ魔王の息子だ」
ガタガタと震えながら、それでも剣を抜く。
その辺で買えるような安物で、恐怖に震えて失禁しながら、それでも挑もうと言うらしい。
「ま、ま、ま、魔王め!お、お、お、俺が殺してやる!」
「せめてもう少し落ち着いて話せ」
俺は丸腰、服装も安物のシャツとズボンだ。
見るからに雑魚とは言え、相手は剣を持って革製の鎧を着た男だ。
「……これで勝てても、卑怯者だぞ?」
「う、う、うるさい!!か、か、勝てればいいんだよォッ!」
だがこの程度の相手なら、全裸で相手をしていてもハンデが足りない。
あまりにも、余裕がありすぎる。
「ウワァァァァァ!!」
考え無しに、盲目的に突っ込んでくる。
武器の構え方も違和感だらけだ。
どこからどう見てどう考えても、完全な素人だ。
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