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マンションまでの道のりは、互いに無言で…でもそれは気まずい空気ではなく、気恥ずかしいくすぐったいような甘い一時だった。
繋がれた右手が彼の太ももに置かれ、まるで初恋の時のような甘酸っぱいドキドキ感が私を包み込んでいた。
いよいよマンションに到着し、一応ご近所の目を気にして手は繋がずに、私が先を歩いて部屋まで案内する。
鍵を開ける瞬間…
「ホントに…お邪魔していいの?
俺、今、やらしい事考えてんだ…よ?」
ボッと真っ赤になりそうになる。
――そんな事…訊かないでよ…
私はドアを開けて彼を中に押し込んだ。
ゆっくりとドアが閉まり、カチャンと鍵をかけて振り返ると、和寿くんが真剣な眼差しで見つめてきて、私を包み込んだ。
「ヤバッ…俺、こんなドキドキしてる…
聞こえるでしょ!?俺の胸の音…」
「……うん」
そう答えてみたけれど、本当は自分の心臓がうるさいくらいに騒がしくて、和寿くんの胸の音との区別がつかなかった。
チュッと軽く唇を重ねた後、彼の手を取ってリビングへ導いていく。
雅樹がいる和室の襖は閉まったまんま。
ちゃんと紹介するまでは…我慢しなくちゃ!と、早く和寿くんに抱かれたいという想いを奥へ押し込んだ。
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