もう一つの秘密

2/10
前へ
/112ページ
次へ
「は~やっと終わった…。」 湯浅さんの居なくなった部屋の中、穴井さんがドサッとソファーに座り込む。 私はその正面までぴょこぴょこと歩いて行き深く頭を下げた。 「あの…ありがとうございました。」 「…私は別に良いんですよ。被害届の気持ちが一番大事ですからね。」 穏やかに笑ってくれた事にホッとして、自分の手のひらを見つめる。 私に謝って、刑事さんに連行されていく湯浅さんを…私は見ていられなかった。 だから穴井さんに聞いてしまったのだ。 『逮捕されない方法はないですか』と。 穴井さんはしばらく呆気にとられた後、苦笑して掴んでいた湯浅さんの腕を離した。 『海斗さんが出したストーカーに対する被害届を取り下げれば…。盗聴機やらなんやらは示談で解決する、とか…。』 それを聞き、私は海斗の目を懇願するように見つめる。 馬鹿げてるのは分かっていた。 自分や海斗だけでなく、今回の事で子供達にまで心配をかけたのだ。 湯浅さんが逮捕されるのは当然の事だし、そんな事は私も分かっていた。 …だけど、湯浅さんはきっと変わってくれると思った。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5233人が本棚に入れています
本棚に追加