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海斗は頭を抱えながら『遊里なら言いかねないと思ってたんだ…』と呟き、苦笑した。
海斗は結局、示談という道を選ばせてくれた。
ただしお金を請求するわけではなく、後日海斗から色々条件を書いた書類を提出するらしい。
示談になるという話しをパトカーに乗る寸前に聞いた湯浅さんは、泣き崩れていたと穴井さんが教えてくれた。
「まぁ、逮捕されて刑罰を受けるだけが償いじゃない。腹は立つがな…。」
そういう海斗の瞳は笑っている。
「彼女の田舎は牧場らしい。まずは田舎に帰らせて、キレイな空気で歪んだ愛情表現を徹底的に叩き直してもらおう。…それと」
そこで言葉を区切り、海斗が真剣な瞳で私を見下ろした。
「…彼女には、二度とこの地域一帯や結城家に関わる全ての者に近づかないよう誓約書を書かせる。これだけは譲れない条件だ。」
「…うん、当然の条件だと思う。被害を受けたのは海斗なのに、示談とか…勝手に言い出してごめんなさい…。」
申し訳なくて海斗の瞳を見られず、俯いたまま謝った。
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