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何気なく聞いただけなのに、海斗と穴井さんの動きがピタリと止まった。
「え…あの…違うの?」
戸惑って聞くと、穴井さんが意地悪そうな笑みを浮かべる。
「…盗聴機などを取るのは2時間程度で終わりましたし、私達はすぐ帰りましたよ?違う女性だったのでは?」
「…おい。意味深な言い方をするな。」
二時間?
だって食事会は4時間もかかって…。
また新たな不安が膨らみ、唇を噛んだ。
「ちょっと意地悪したくなっただけですよ。不安そうな顔も可愛い…。」
穴井さんの笑顔が怖いと感じるのは私だけだろうか。
「遊里さんは、海斗さんを信じていたら良いんですよ。海斗さんは親バカならぬ遊里さんバカですから。遊里さんを傷つけるような真似、絶対に出来ません。」
「…言い方は腹立たしいがその通りだ。すぐに分かるから、俺を信じていろ。」
海斗が優しく私を見下ろす。
なんだかよく分からないが、どうやら信じて良いらしい。
小さく頷いて、そっと海斗のスーツの裾を掴んだ。
「…穴井、早く帰れ。」
途端に海斗が冷たく言い放つ。
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