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「はいはい。お邪魔虫してすみませんでした。」
苦笑し、穴井さんがお辞儀をしてドアに向かう。
その背中に慌てて声をかけた。
「あのっ色々とありがとうございました!!」
もちろんこの“色々”には、ホテルでのドアを開けておいてくれた気遣いへのお礼も含んでいる。
穴井さんはそれを感じとったのか、少しだけ申し訳なさそうに笑って手を振ってくれた。
二人きりになった部屋の中。
突然海斗が私の前に膝をつく。
「早く二人きりになりたかったのか?」
私が掴んでいるスーツの裾を持ち上げ意地悪く笑った。
「だって…ずっと触れてないから…海斗目も合わせてくれないしっ」
「目を合わせたら触りたくなるからな…これでも必死に我慢していた。寂しい思いをさせてすまなかった…。」
海斗の瞳が真っ直ぐに私を見つめる。
なんだか泣きたい気分になって、スーツの裾をツンツンと引っ張った。
「ぎゅうって、して。」
子供みたいな言い方をしたのに、海斗が嬉しそうに笑う。
そしてソファーの隣りに座り力強く抱きしめてくれた。
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