~起動の章・壱~

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    彼は悪魔と契約したといった。 正直悪魔だのなんだのって、俺の年頃では信じない方だと思う。だから最初、コイツは俺を馬鹿にしてんのかと思った。 でも話を聴けば聴くほど、目の前の彼は本当に契約したのかと思いしらされる。 まず誓約者になるには悪魔と契約を交さなければならないらしい。 強い憎しみ・憎悪・怨み・または強い意志を持つ霊魂の前にだけ悪魔が現れ、契約の話を持ち出すと言う。 契約の時に言われた対価と引き換えに、人間にとり憑き誓約を交させ、その誓約が叶った時にその人間の体は自分の物に出来る力……。 その力を手に入れる契約だった。 ……対価ってなに? そう聞いたけど、柚樹は教えてくれない。 只、人間にとり憑いて体が自分の物になっても、“例外”以外は体と魂が合わないため、大体5年ももたず肉体が壊れていくという。 そして誓約者は人間が壊れては次にまた次にと、何十人何百人と人間の体を渡り歩いて行くのだと聞いた。 全ては己れの為に………。 それを黙って聞いてた俺は怖くなった。怖くて怖くて、それでいてとても… 「かわいそう。」 ポツリと呟く俺の声はかすれていて、彼の耳に届く事はなかった。 それは当時7歳の出来事。      
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