0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「ウオオォォォ」
突然、一人のサラリーマンらしき男が、唸るようにして叫んだ。
男を中心に、段々と、まるで水面に広がる波紋のように沈黙が広がっていく。
いつしか、人混みの流れは動きを止め、誰もが、その不思議な光景に目を奪われていた。
男の皮膚は血のように赤く染まっていたのである。
暫(しばら)くの間、男は石膏像のように頭を抱えて動かなかった。
三分ほど経っただろうか、男の皮膚に皹(ひび)が入り始めた。
ついには、その割れ目の間から白い、蒸気のようなものが出始めた。
最初のコメントを投稿しよう!