帰り道

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美春はたい焼きができるまでその音楽に耳をかたむける。 その歌は昔の歌謡曲で所謂、失恋ソングだった。 相手を好きだと気づいた時にはもうすでに相手には恋人がいて、後悔し、一晩中泣き明かすという悲しい歌だ。 まるで裕也の恋愛遍歴を聴いてるようで美春はこの歌詞の主人公に同情したくなった。 それから二人は帰り道にある小さな公園に立ち寄った。 幼いころからよく遊びに来る公園で、二人は二つ並ぶブランコに座った。 裕也は買ったばかりのたい焼きの袋を開けると、湯気を放つ出来立てのを一つ取りだし、美春に差し出す。 「ありがと」 それを受け取った美春はたい焼きを真ん中から二つに割ると、あんこを冷ますように息を吹きかけながら、頭の方からパクつく。 裕也も美春の機嫌が良くなったと安心し、頭から豪快にかぶりつく。 裕也は一つ食べ終え、落ちついたとこで、本題に入った。
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