1人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は今、とある寮で暮らしている。
付近にコンビニ、スーパー有り、最寄り駅までは徒歩7分、月30000円の格安物件。
別に古い訳でもないし、風呂もトイレもある。
立地もいいしお墓が近くにあるとか、過去に自殺があったとか、とういう物騒な噂は聞いたことが無い。
2LDKの立派な部屋だ。
それにもまあ、一応理由はあるんだけど。
寮は三階建てで、俺の部屋は2回にある。
部屋番号は『206』だ。
朝のジョギングを終えて家に戻ってくるのは、いつも大抵7時くらいになる。
家に戻ったら俺はすぐさま風呂に直行し、汗を流すのだが、今日は少し違った。
普段、静寂に包まれているはずの室内から、微かな物音と腹に直接食欲を訴えかけるような、とても美味しそうな匂いがしたのだ。
台所の方から、何かを焼くようなジュージューという音がする。
匂いと音に釣られ、リビングの奥にある台所を覗いてみると、そこには上下黒のスウェットを身に纏った細身の男がフライパンを器用に扱う姿が見えた。
予想外のことに俺は驚き、思わず声をあげる。
「うっわ。珍しいー」
俺の声に気付いた男は、こちらに振り向いた。端正な顔立ちだが、そこに覇気は一切ない。
いかにもやる気のない顔だ。
「あ……おかえり」
最初のコメントを投稿しよう!